お役立ちコラム

資材購買の仕事とは?仕事内容、調達と購買の違い、求められるスキルを紹介

製造業におけるキーポジションの一つともいえる資材購買。 今、資材購買の仕事をしている方で、キャリアの棚卸をしたい方、仕事内容の深堀をしたい方。 また別職種からのキャリアチェンジを考えている方などに、資材購買の具体的な仕事内容、購買と調達の違い、求められるスキルについて、詳しく解説していきます。

資材購買の仕事内容とは?

資材購買部門が担う主要な業務は、製品製造に不可欠な資材や部品を、最適な価格、タイミング、品質で調達することです。

1.見積書を取る

  • 見積書の主要項目
・仕様の詳細: 購入希望の商品についての仕様や品質を明記します。 ・価格の内訳: 総価格だけでなく、必要に応じて各部品や加工内容ごとの内訳を明記します。 ・納期: 商品の納入時期や、場合によっては製造・出荷スケジュールなどの詳細も記載されます。 ・支払い条件: 支払いの方法、期限、割引条件など、金銭的な取引条件を明記します。 ・有効期限: 見積書の価格や条件が有効となる期間を示します。
  • 見積書取得のポイント
・明確な要求事項: 自社の要望を明確にし、それに基づいた見積書を取得します。 ・相見積もり: 複数のベンダーから見積書を取ることで、価格、納期、信頼性など総合的な観点からより適切な選定ができるようになります。 ・内容の精査: 見積書の内容が、自社の要望を正確に反映しているかを欠かさず確認します。

2.市場のリサーチ

既存ベンダーからの仕入れを想定している場合でも、日常的に市場動向を把握することは必須です。 価格変動、新技術、供給状況の変化など市場の最新情報を把握した上で、既存ベンダーでは自社ニーズを満たせないと思われる場合は、新規開拓も検討していきます。
  • 市場リサーチの主要項目
・市場動向の調査: 新しい技術や製品、原材料の動向を把握するためのリサーチ。 ・価格動向の調査: 競合他社の価格情報や市場平均価格を収集・分析。 ・供給者の動向: 供給者の財務状況、製造能力、技術革新などの情報を調査。
  • 市場リサーチの手段
・公開情報の収集: 業界団体やリサーチ会社のレポート、ニュース、専門誌などの情報を活用して、市場の動向や価格情報を収集します。 ・既存ベンダーからの情報収集: 普段から良好な関係を構築しておき、新商品や技術動向、供給状況など生の情報を得ていきます。 ・展示会、セミナー:  実物の製品やサンプルを手に取って確認できます。直接ベンダー担当者とコンタクトを取り、新たな情報を得ていきます。

3.ベンダーの選定

  • 既存ベンダーの評価
既存ベンダーに依頼をするか、新たなベンダーを開拓するかの判断は、以下をポイントにして行います。 ・過去の取引実績: 納期遵守率、品質問題の有無、アフターサポートの対応など。 ・価格競争力: 市場リサーチを元に、既存ベンダーの価格が適正であるかを評価します。 ・技術力や新商品提案: 新たな製品や技術の提案があるか、それが自社のニーズを汲み取ったものであるか、などを確認します。
  • 新ベンダーの検討
新たなベンダーの開拓が必要な場合は、以下のステップで行います。 ・新ベンダーのリストアップ: 市場リサーチの結果などを元に、検討対象となるベンダーをリストアップします。 ・初回打合せ及び工場訪問: ベンダーの実力や信頼性を直接確認するため、打合せや工場訪問を行います。 ・試供品の取得と評価: 実際の製品を取得して、品質や性能を評価します。

4.価格交渉

資材購買における価格交渉は、企業が競争力を保ち、生産コストを最適化する上での中心的な役割を果たします。 コスト削減をすることで自社の利益率を増加させ、仕入れ値を下げると同時に、品質の維持・向上を両立させます。 また、長期契約や安定供給を担保することで、供給におけるリスクを減少させることが重要です。
  • 交渉前の下準備
・市場価格調査: 現在の市場価格や業界の平均価格を事前に確認し、交渉の基点を作ります。 ・ベンダー評価: 供給者の信頼性、品質、納期の実績など、これまでの取引実績を元にベンダーを評価します。 ・見積書を揃える: ベンダー評価から調達先候補を複数挙げ、各社から見積書を取ります。
  • 価格交渉本番のポイント
・オープンなコミュニケーション: 明確な要求と期待を伝え、同時にベンダーの意見や提案も受け入れる。 ・代替案の提案: ベンダーとの交渉が難航する場合、代替の資材やサービスを提案することで新たな合意点を見つける。 ・ロットの確保: 大量購入を前提とすることで、一単位あたりの価格を下げる余地を作り出す。 ・リレーション構築: その場の勝負ではなく、長期的に取引ができる関係性を築くことで、次回の交渉時も有利に進められるようにします。

5.契約締結

契約締結は双方の合意を正式に確認し、具体的な取引の条件や期間を明文化するものです。 取引条件を明確にして、問題や誤解を未然に防止するリスク回避をする。もし万が一、紛争が発生した場合の法的な証拠として活用するために、慎重に進めていくことが必要です。
  • 契約締結のステップ
・契約書のドラフト作成: 合意された条件や取引の詳細を基に、契約書の原案を作成します。 ・詳細確認: 原案を双方で確認し、不明確な点や修正が必要な部分をすり合わせます。 ・修正と最終確認: 必要な部分を修正し、双方が納得する形に契約書を仕上げます。 ・契約締結: 完成版の契約書に双方が署名し、契約が成立します。
  • 契約締結時の注意点
・明確な言葉遣い: 契約書内の用語や表現は一貫性を持ち、曖昧さを排除する必要があります。 ・細部までの確認: 納期、ペナルティ、支払い条件など、細部まで十分に確認をすることで未来のトラブルを避けることができます。 ・リーガルチェック: 事前に社内の法務部門に確認を依頼する。社内に専門家がいない場合は、外部の専門家に契約書を確認してもらい、法的な問題を予防します。
  • 契約更新について
・契約期間の終了: 契約には有効期限が設けられていることが多いので、更新時期と更新方法を見逃さないように注意します。 ・市場環境の変化: 価格の変動や供給状況の変化など、外部環境の変動によりそれまでの契約内容では自社のビジネスが成り立たなくなる場合があります。その場合は、勇気をもって内容の見直しと、取引先との再度交渉をしていきます。

6.納期の管理

特に近年、地政学リスクや原材料高などからサプライヤーからの安定供給の難易度は上がっており、材料や部品の供給が予定通り行われることの重要性が一層高まっています。 納期管理により、予定通り材料が確保することで、生産ラインの停滞や遅延を防ぎ正常な生産を維持します。 また、納品遅延を無くすことで、顧客や取引先からの信頼性を保ち、追加コスト発生や機会損失を避けていきます。
  • 納期管理のステップ
・必要量と納期の確認: 生産計画やプロジェクトの進行に基づき、必要な資材の量と納期を明確にします。 ・ベンダーとの情報供給: 納期や供給能力についての情報共有をベンダーと密に行います。 ・進捗管理: 納期に向けた供給の進捗状況を定期的にチェック。遅れが出そうな場合は、先回りして対応策を講じます。 ・リスク特定と対策: 供給遅延のリスクを早期に特定し、代替手段や対策を検討します。
  • 納期管理のポイント
・生産能力の把握: ベンダー側の生産能力を常に把握し、予定している供給ができる状態であるのかを把握しておきます。 ・情報の透明性: ベンダーとのコミュニケーションを頻繁にとることで、情報の透明性を確保します。 ・柔軟な対応: 予想外の変動にも迅速に対応できるよう、柔軟な対応をしていくことが重要です。 ・技術の活用: ITツールやERPシステムを使用して、リアルタイムの情報共有や進捗管理を行うことで、より効果的な納期管理を実現します。 ・関係性構築: 特に急な対応が必要な時、ベンダー側も人が運営していることから、関係性ができている会社ほど良い対応をしてくれるものです。普段から対等な関係を意識し、信頼関係を構築しておくことが重要です。

7.検収・受入検査

納品時に行う研修・受入検査では、契約内容や品質基準に従って正しい資材が供給されているかを確認し、製品の品質や安全性を確保します。 また、過剰な要求を突きつけることだけに走らず、検収を通じてベンダーとの信頼関係を築き、今後の取引を円滑に進める基盤を作ることが重要です。
  • 検収・受入検査の具体的なステップ
・受領確認: 納品された資材が注文通りの数量・品目であるかを確認します。 ・外観検査: 資材の外観に傷、破損、変形などがないかを確認します。 ・詳細検査: テストや測定により、資材の性能や規格が契約内容や品質基準に合致しているかを確認します。 ・文書確認: 検査証明書や保証書など、必要な文書が全て揃っているかを確認します。
  • 検収・受入検査の注意点
・検査基準の明確化: 事前に検査基準や詳細な手順を明確にしておき、検査がスムーズに行われるようにします。 ・設備・器具の整備: 測定器具やテスト設備は定期的に校正や点検を行い、正確な検査ができる状態にしておきます。 ・教育訓練 検査担当者に対する定期的な教育訓練により、正確な検査手順や基準を理解し、スキルを維持・向上させます。

8.在庫管理

資材購買業務における「在庫管理」は、最適な資材の在庫量を維持しつつ、生産や営業活動を滞りなく進めることができるようにするための管理作業を指します。
  • 在庫管理の要点
・需要予測: 生産や営業活動に必要な資材の需要を予測し、それに基づいて購買計画を立てます。 ・発注タイミングの最適化: 在庫が少なくなった際の再発注点を計算し、最適なタイミングでの発注を実施します。 ・安全在庫の確保: 予期せぬ需要の増加や供給側のトラブルを考慮して、一定の安全在庫を確保します。 ・コストの最適化: 在庫コスト、発注コスト、欠品コストをバランスよく管理し、全体のコストを最適化します。 ・サプライヤーとの連携: サプライヤーとの情報共有を行い、供給の安定や納期の最適化を図ります。
  • 倉庫管理業務と資材購買の在庫管理との違い
資材購買における在庫管理は、資材の最適な発注タイミングや数量を特定し、コストを最適化することを目的とします。 一方、倉庫管理業務における在庫管理は、物理的な在庫の配置、移動、および追跡を中心とした業務を指し、物理的な在庫の効率的な管理と追跡を主な目的としています。 ツールについても、資材購買では、需要予測ツールやERPシステムを用いることが多い一方、倉庫管理では、バーコードスキャナーや倉庫管理システム(WMS)など、在庫の物理的な管理をサポートするツールが使用されます。

9.ベンダーとの関係構築

近年、サプライチェーン構築の重要性が増している中、ベンダーとの関係構築はこれまでになく重要となっています。自社の生産を安定的に継続する上で、ベンダーと信頼関係を構築し、長期に渡り安定供給ができる関係性を作る事が必要です。 また、何か問題が発生した際に、関係構築ができていればすぐに対応してもらえる確率が高まる他、マーケット動向や新製品、技術情報など、新しい価値ある情報もすぐに共有してもらえるようになる点も見逃せません。
  • ベンダーとの関係構築の方法
・定期的な振り返り:  定期的に実施することで、取引の進捗状況や問題点、改善提案などを共有します。打合せの内容や合意事項を記録に残し双方で確認することで、認識のズレを防ぎトラブルを未然に防止します。 ・フィードバックの実施:  ベンダーから提供された製品に関する評価や改善点を、定期的にフィードバックします。また、自社の事業方針や需要予測などを予めベンダーと共有していくことで、急な需要増、需要減に対して適切に対応できるようにします。 ・研修や勉強会の開催:  ベンダーが新しい技術や製品を導入する際の研修や、業界の最新情報やトレンドに関する知識を共有するための勉強会を開催します。 ・長期的な視点での関係構築:  ベンダーとの関係構築は、短期的な利益追求に走らず、長期的な取引関係を視野に入れて活動をしていきます。両社で共通の目標・ゴールを共有し、そこに向けて協力して取り組むという思想でビジネスの発展を目指します。その意味で、ベンダーは単なる供給者ではなく、パートナーとして見る事が重要です。

10.開発購買

開発購買は、新製品の開発や既存製品の改良・リニューアルを目的として行われる購買活動です。製品の開発段階から関与し、設計、製造、供給チェーンの各フェーズでの最適な部材やサービスの調達をサポートします。 購買業務の中でも相応の経験値と専門知識が要求される、レベルの高い業務となります。
  • 開発購買の主な業務内容
・市場リサーチ: 新製品の開発にあたり、最新の技術動向、材料の市場動向、競合他社の動きなどをリサーチします。 ・ニーズの明確化と共有: 開発チームと連携しながら、新製品の要件やニーズを明確にし、共有します。 ・サプライヤーとの協業: 新製品の開発に必要な部材や技術を持つサプライヤーを特定し、開発フェーズから協業を進め、技術の革新やコストダウンを実現します。 ・コスト管理: 開発フェーズから製品の生産にかけてのコストを最適化します。部材の選定や価格交渉、代替部材の提案などを行い、全体の製品コストを管理します。 ・品質管理: 適切な品質の部材を選定し、サプライヤーとの品質基準の合意を取り付けます。また、サンプルテストや評価を行い、品質を確保します。 ・リスク管理: 供給チェーンのリスクを評価し、問題が発生した際の対策や代替手段を検討します。 ・長期的な関係構築: 開発購買は一過性の取引ではなく、長期的なビジョンを持つことが求められます。サプライヤーとの長期的な関係構築やパートナーシップの形成が重要です。

調達と購買の違い

調達は、購買業務全体のうちの一部分を指します。ベンダーと注文内容が確定してからの実際の発注作業、納期管理、検収・受入検査までとなりますが、会社によっては、ベンダー選定までを含めている場合もあります。

求められる能力、スキル

一般的な資材購買購買業務と、開発購買が加わった場合の2つの視点で解説します。

1.一般的な資材購買

・交渉力: 既存ベンダーとの取引をスムーズに進めるため、適切な価格や納期を実現する交渉力は必須です。 ・コミュニケーション能力: ベンダーとの良好な関係を構築する上で求められる、ヒアリング能力、アサーション、調整力などが必要です。 ・分析能力: 市場の動向やベンダーの提供する情報を適切に分析し、正確な判断を下す能力。 ・リスク管理能力: 供給の遅延や品質の問題などのリスクを先読みし、適切に対応する能力。 ・組織的思考力: 全体の供給チェーンを視野に入れ、最適な購買判断を行う能力。

2.開発購買がある場合

・技術的知識: 新製品や技術の動向を理解し、その上で最適な部材を選定するための知識。 ・革新的思考: 新しい技術や材料を取り入れる際のアイデアを提案する能力。 ・プロジェクト管理能力: 複数の部門やベンダーと連携し、開発プロジェクトを円滑に進める能力。 ・長期的ビジョン: 長期的な関係構築や未来の技術動向を視野に入れた戦略的な判断力。 ・市場リサーチ能力: 新しい技術や市場の動向を捉え、それを開発購買の戦略に反映させる能力。

資材購買の仕事のやりがい

資材購買の仕事におけるやりがいを、4つの視点で解説します。

1.成果の実感

・交渉や新しい供給元の発掘により、自社のコスト削減ができた時の達成感。 ・求める品質の材料や製品をタイムリーに、且つコスト効率よく調達することで生産や業務が円滑に進むことを実感する達成感。 ・供給リスクを早期にキャッチし、適切な対応をとることで大きな問題を回避した時の安堵感。 ・サプライチェーン全体を効率化する提案や取り組みが実を結び、業績向上に寄与した時の達成感。

2.新しい技術や材料の発見

・市場リサーチを通じて新しい技術や材料を発見し、会社の製品やサービスの競争力を向上させるやりがい。

3.関係性の構築

・自社の製造、設計、販売など他部門との連携を作り、組織全体で成果を上げた時の喜び。 ・ベンダーと信頼関係を築き上げ、WIN-WINな関係で取引を継続できることへの満足感。

4.持続可能性な調達

・環境や社会的側面を考慮した持続可能な調達を推進し、SDGsに寄与出来ているやりがい。

まとめ

資材購買の仕事は、単に材料や製品を仕入れるだけではなく、自社の経済性や効率性を高めるキーポジションとしての役割を持っています。 資材購買の仕事の魅力は、組織全体の動きを俯瞰し、戦略的な視点で資材の確保やコスト管理を行える点にあります。その分、専門知識だけでなく、コミュニケーション力、交渉力、組織的思考力など求められる能力が多岐に渡る、レベルの高い仕事です。 資材購買の仕事の成果は、自社の利益や業績に直接影響を与えるため、そのやりがいは非常に大きいものがあります。 資材購買の仕事の奥深さや魅力を再評価することで、今後の自分自身が描くキャリアの方向性と合致しているかを検討し、よい職業選択をされることを願っております。
記事一覧へ