コラム
資材購買の仕事はきつい?その実態と理由、向いている人の特徴について紹介

製造業におけるキーポジションの一つともいえる資材購買ですが、その実態は決して易しいものではありません。
一方、この仕事は専門性が高く、様々な面でやりがいがある仕事であることも事実です。
今回は、資材購買の仕事内容の厳しい面とその理由、どういう人がこの仕事に向いているのか?について詳しく解説していきます。
目次
資材購買でよく聞かれる退職理由
購買職を離れたいと考える方々に共通する理由として以下のようなものが挙げられます。
コストダウンのプレッシャー
製造業では、原材料や部品の購入コストを下げることが直接的な利益に繋がります。そのため、購買部門には常にコストダウンの目標が設定されます。
しかし、購買部門はいわゆる「買い手」の立場ですが、安穏としてはいません。コストダウンのプレッシャーをキツイと感じています。
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キツイ要因
・市場の変動
原油価格の上昇や天候による農産物の不作、地政学リスクなど外部の要因で原材料の価格が上昇することもあります。
しかし、そのような状況下でもコストダウンの要求が変わるわけではありません。その分るプレッシャーは増大します。
・取引先との関係
コストを下げるためには、取引先との交渉が必要です。しかし、過度なコストダウンの要求は取引先との関係を悪化させるリスクもはらんでいます。
ましてや、近年は原料高や地政学リスクから材料供給のハードルが高くなっており、売り手側の力が相対的に増している状況。買い手が上の立場ではなくなっています。
・継続的な要求
一度のコストダウンが成功しても、次の年には新たなダウン目標が会社から求められます。この要求が毎年毎年続くことで、購買担当者は先が見えない要求の精神的負担が掛かることになります。
キャリアの先が見えない
資材購買は、その企業の利益に直結する重要部門です。しかし、その重要性にも関わらず、キャリアの先が見えない、限定的と感じる購買担当者は少なからずいます。
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先が見えないと感じる要因
・特化した専門性
資材購買は高い専門性のある仕事です。しかし、その専門知識(例:材料や部品などの市場動向に関する知識。サプライチェーン全体の理解)は購買業務に特化したものであるため、他職種で直接的に活かしにくい面があります。
例えば、製造部門やマーケティング部門でも購買の専門知識は活用できますが、その知識よりも、各部門特有の専門知識がまず求められます。
・昇進機会が限られている
多くの会社で資材購買部門は、他部門よりも相対的に人数が少なく、必然的に上位のポスト数も限られてきます。仕事のスタイルも基本的に一人で担当業務を進めていくスタイルである事が多く、マネジメント職にも限りが出てきます。。
・業績評価の難しさ
資材購買担当者の業績評価が「コストダウン」指標に偏りがちです。購買には「品質確保」「納期管理」「リスク管理」など幾つもの重要要素があります。
しかし、例えば品質であれば、製品が長期的に異常なく使われて初めて品質が良かったと評価されます。納期管理における他部門連携についても、どの部門の貢献度が特に高いかの評価も、主観が多分に混じり容易ではありません。
リスク管理に関しては、取り組んだことで短期的にコスト増になることもあり、逆に短期的な業績評価で見ればマイナス評価となりかねません。
結果的に、コストダウンに評価が偏ることになり、その目標を追いかけ続ける事にモチベーションが保てなくなる人が出てきます。
業者との繰り返しの交渉
資材購買の日常業務の中で、取引先業者、ベンダーとの交渉は避けては通れない大きな役割の一つです。
しかし、年間を通じて繰り返し続くこの交渉で起こるストレスや疲れから、退職を考える担当者も少なくありません。
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どうして「繰り返し」続くのか
・年間契約の更新
多くの企業では、取引先と年間契約を結んでおり、毎年更新をしています。これにより、価格や納期、品質などの条件を毎年再交渉する必要が出てきます。
・市場の変動
原材料価格の変動や、供給業者の経営状況、技術の進化など、市場の状況は常に変動しています。これに対応するためにも、定期的な交渉が不可欠となり、業者との交渉は絶えず繰り返し行わなくてはいけません。
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交渉のストレス
・同じ議論の繰り返し
仮に前年で、取引先と好条件で契約更新ができたとしても、毎年毎年、値段、納期など同じ議論を繰り返すことになります。既に十分良い条件で供給してもらっている取引先であっても交渉をしなくてはいけません。この繰り返しは、多くの購買担当者を疲弊させる要因となっています。
・人間関係の摩擦
上述のように、既に自社にとって好条件で取引をしている取引先に対しても、常に値段、納期について要求することが求められます。
また近年は、供給者側の立場も強くなっている中、購買担当者は「買い手」という立場に驕らず、対等な信頼関係を築く事を求められています。その点も加わり、交渉に掛かるストレスはますます大きくなっています。
会社の利益を追求しつつ、取引先との関係も保持しなければならない立場から、時には取引先や社内との板挟みで悩むこともあります。
取引先や社内との板挟み
資材購買担当者は、単に取引先業者と自社の間に立つだけでなく、製造、設計、営業など自社の多くの部門と連携をとる役割を持っています。
各部門それぞれの立場から様々な要求が上がる中で、取引先や社内との板挟みで苦しむ事が少なくありません。
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板挟みの実態
・取引先の要求
供給業者は、自社の利益を最大化するための条件を求めてきます。近年は原材料高、輸送費、人件費など様々なコスト増から、価格転嫁をこれまでにない強い姿勢で臨んでくる業者が増えています。価格、支払い条件、納期など様々な項目からの要求があります。
・社内の要求
一方、自社の製造部門や営業部門は、製品の品質やコスト、納期などの面での最適な条件を求めます。
- 社内各部門からの要求
・製造部門
[品質]
製造部門は、製品を高品質で生産するために、購入する部品や材料の品質を非常に重視します。これには、耐久性や性能、規格の一貫性などが含まれます。
[納期]
製造スケジュールに合わせて、部品や材料が適時に供給されることが求められます。遅れると生産ラインが停止するリスクが生じるため、正確な納期管理が必要です。
[コスト]
製品の生産コストを下げるために、部品や材料の価格交渉が重要となる。製造部門は、コスト削減を求める一方で品質や納期の確保も求めます。
・設計部門
[新技術、材料の導入]
設計部門は、新しい製品の開発や既存製品の改良のため、新しい材料や技術の導入を求めることがある。この要求に応じて、購買担当者は新しい材料供給業者や加工会社の探索や評価を行う必要があります。
[仕様変更]
設計の変更や改良に伴い、部品の仕様が変更されることがある。これに応じて、供給業者との再交渉や新たな取引条件の確定が必要となります。
[試作品用の調達]
新製品の開発段階で、試作品の製造に必要な部品や材料の速やかな調達を要求することがある。取引先とは、短期的な取引、個別での条件交渉が必要となることもあります。
・営業部門
[納期]
顧客への納品スケジュールに影響が出ないよう、購買部門には部品や材料の確実な供給が求められます。
[品質]
営業部門は、顧客からの信頼を得るために、製品の高品質を保証したいと考えます。そのため、購入する部品や材料の品質に対する要求が高まります。
[価格競争力]
営業部門は、市場での価格競争力を保つために、製品の生産コストの削減を求めることがあります。これには、購買部門のコスト削減の取り組みが不可欠です。
孤独感
資材購買業務は、多くの外部業者や社内部門との連携を必要とする一方で、自分の担当分野については一人で業務を進めていく事が多くなります。
大手企業であれば、組織立った形で進めていくこともありますが、独立して行動することも多くなります。そこで必然的に「孤独感」を感じる担当者も少なくありません。
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孤独感を感じる理由
・単独での判断
購買業務は多くの場合、一人で業務遂行します。価格や納期、品質などの条件での交渉においては独自の判断や戦略が求められることが多くなります。
これによって、他メンバーとの日常的なコミュニケーションやチームワーク構築の機会が限られることがあります。
・情報の非公開性
取引先との交渉内容や契約条件は、時に非公開とされることもあります。そのため、社内での共有、相談がしにくく、それが孤独感に繋がることが出てきます。
資材購買の仕事の魅力
資材購買の仕事には確かに上記のような厳しい面がありますが、その一方で多くの魅力も存在します。ここでは、購買の仕事の魅力やその背後にある理由について詳しく解説します。
業界の第一線に立てる
購買担当者は、さまざまな業者や業界の人々と日常的に交流します。これにより、業界のトレンドや新しい技術、市場動向などに明るい状態でいることができ、業界の第一線に立って仕事をしている実感が得られます。
また購買業務を通じて、企業の製品やサービスの生産から販売までのプロセス全体に広くかかわれるやりがいも得られます。
交渉スキルが身につく
購買担当者は、価格や納期、品質などの条件での交渉を日常的に行います。これにより、高度な交渉スキルが身につき、戦略的思考、問題解決能力も養う事が出来ます。
成果を直感的に実感
購買業務の中心はコストダウンですが、その成果は企業の利益に直結するため、自らの業績を直感的に実感することができます。
また、良質な部品や材料の確保により、自社製品の品質や競争力の向上に貢献でき、自社成長にかかわっている実感が得られます。
深い専門性
購買業務を通じて、特定の材料や部品、市場動向、サプライチェーン管理などの深い知識が身につきます。
資材購買の仕事は一人で業務遂行をすることが多いという特徴もあり、専門職としての色合いが強い仕事と言えます。専門性とスキルを身に付ければ、その分、専門職としての箔がつき、市場価値を高めていく事ができる仕事です。
資材購買の仕事が向いている人の特徴
資材購買の仕事は深い専門性を持つ、魅力ある仕事ですが、ここでは、資材購買の仕事が向いている人の特徴や背後にある理由について詳しく解説します。
好奇心旺盛
購買担当者は業界の最前線で働くため、新しい技術や市場の動向など業界の第一線での情報を常にキャッチする必要があります。そのため、常に新しい知識を求める好奇心が必要です。
交渉スキルを磨く意欲
価格や納期、品質などの条件についての取引先との交渉は購買担当者の日常業務。交渉を得意とする人、交渉事が好きな人、または交渉スキルを磨きたいと考える人には最適な仕事です。
成果を実感することでのモチベーションアップ
コスト削減の直感的な実感: 購買業務の成果の一つにコスト削減があります。これは企業の利益に直接的に影響する成果のため、自らの業績を実感しやすく、これがモチベーションの源となり得ます。
専門性を深める意欲
購買業務を通じて、特定の材料や部品に関する深い知識や情報を持つことになります。専門職としての色合いが強い仕事になるため、ビジネスパーソンとして専門性を深めたいと考える人には向いています。
耐久力と柔軟性
市場の動向や取引先の状況、社内の要求など、多くの変動が日々生じる購買業務。こうした日々の変動に対応するための耐久力と柔軟性が求められます。また、変化のない状態を退屈と感じ、変化が起こることを楽しめる方にも向いているといえます。
まとめ
資材購買の業界は、高いプレッシャーや複雑な交渉が日常となる一方で、業界のトレンドを掴む魅力や交渉スキルの向上、明確な成果の実感、専門性の習得という魅力も併せ持っています。
今回の記事を通じて、資材購買の仕事の魅力と可能性を再確認する機会となれば何よりです。
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